映画「カムイのうた」の劇場公開が決定し、2023年11月23日(木祝)に北海道で先行上映されることが報じられました。
カムイのうたの主人公テルのモデルとなったのは、実在されたアイヌ民族の知里幸恵さんです。知里幸恵さんとはどんな女性だったのか。知里幸恵さんについて書かれた書籍「ピリカチカッポ(美しい鳥)知里幸恵とアイヌ神謡集」のあらすじと感想について書いています。
石村博子著「ピリカチカッポ知里幸恵とアイヌ神謡集」のあらすじ
「その昔この広い北海道は、私たちの先祖の自由の天地でありました」。一〇〇年前、一人のアイヌの少女がこの一文から始まる一冊の本を残した。一度は忘れ去られた知里幸恵はなぜ復活し、アイヌの魂の象徴的存在となったのか。『神謡集』ノートや日記など未公開や新資料をもとに、「生の限りを書かねばならぬ」との誓いに殉じたその生涯を描く。
引用元:岩波書店
- 著者:石村博子
- 刊行日:2022年4月27日
- ページ数:246ページ
- ジャンル:伝記
ピリカチカッポ(美しい鳥)知里幸恵とアイヌ神謡集の感想
知里幸恵をモデルにした映画「カムイのうた」が上映される…という前情報+書店のとあるコーナーにあったので、手に取ったわけですが、一言感想をいうなら、
「読んで良かった」
と、素直に思える作品でした。
知里幸恵という人物がどんな女性だったのか、彼女(アイヌ)を取り巻いていたのはどんなに生きにくい世界だったのか。
アイヌに対する和人(シサム)の残酷な仕打ちも語られていますが、現実は更に大変だったことも語られています。
時代背景や、加えて周りにいたアイヌや同じ年頃のみいちゃんの死。度重なる大切な人たちの死に、打ちのめされる姿は、幸恵がどうしてこんなに苦しい思いをしなくてはいけないのか?と思うほどです。
本書では幸恵の生い立ち、一生に一度の恋についても語られています。生まれつき心臓病を患う幸恵が、命をかけて神謡集を書き上げていきます。愛してる人がいて、でも自分は体が弱くて結婚はできない、こどもを産むこともできない…19歳が受け止めるには、あまりに重すぎる。
突き付けられた現実を振り払うように、神謡集を完成させて命潰えた幸恵。言葉が見つかりません。
関東大震災で資料が消失。修正が入ったタイプ原稿もいまだに見つかっていないなど、不運が続きます。けれど、その後、忘れ去られた幸恵の名が世に知られることになる過程が、ドラマティックで唯一の救いでした。
伝記の中ではいくつかの書籍(小説や評伝)や人物についても紹介されていました。紹介されていたのは下記作品。
機会があれば、読んでみようと思います。
ピリカチッポ(美しい鳥)知里幸恵とアイヌ神謡集まとめ
19歳で命を閉じた知里幸恵。短くも濃密な人生で神謡集書き上げ出版に至る経緯。その後忘れ去られ、再び息を吹き返すまでが書かれています。
この本を読むと、アイヌと和人の歴史(同化政策やアイヌにしてきたひどい仕打ちなど)がよくわかります。
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